特集 新生児外科
新生児外科における麻酔と術中管理
里吉 光子
1
1順大麻酔科
pp.23-27
発行日 1962年9月1日
Published Date 1962/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202399
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はじめに
新生児の手術はわが国でもこの3〜4年の間に特殊な技術を要する外科の新しい部門として注目されるようになつてきました.新生児によくみられる奇形には,兎唇・狼咽とか,手足の指の異常,生れながらにして頭の大きな水頭症,背骨の一部からふくろ状のものがもり上つている脊椎披裂,腹壁の一部,ことに臍帯から内臓の脱出しているものなどのように一見してすぐ分るものもありますが,もつと重要な生命にかかわる内臓奇形,たとえば心臓・大血管の異常とか消化管の狭窄や閉塞などの通過障害は,外見からはなかなか気づきにくいものです.従来これらの内臓奇形は,わけの分らない呼吸困難やチアノーゼ,溢乳,嘔吐などを繰返しているうちに,肺炎とか全身衰弱という診断で死亡することが多かつたのですが,現在では見つけられ次第,専門の新生児外科に送られるように変つてきました.そこで新生児の緊急を要する手術は,生れて間もないものから,数日を経て皺だらけにやせ衰え,泣く元気もなくなつて了つたようなものにまでも行なわれるようになつたのです.このように新生児外科が発達してきたのは,もちろん外科的な特殊な診断法とか手術手技の進歩にもよりますが,大きな理由として,1)すぐれた抗生物質が用いられるようになつたこと,2)輸液(別項参照)がくわしく研究され,術後の管理がゆきとどくようになつたこととともに,麻酔の著しい進歩があげられています.
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