研究
分娩,産褥時におけるフラジオマイシンの使用経験
安井 修平
1
,
伊藤 宜孝
1
,
中江 光成
1
,
小林 はる
1
1東京逓信病院産婦人科
pp.58-59
発行日 1959年5月1日
Published Date 1959/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201687
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(1)緒言
ペニシリンの発見に始まる抗生物質の研究は僅か数年の間に目覚ましい発展を遂げ,今日まで見出された抗生物質は数百種を下らないと云われている.そしてその抗菌スペクトルムも比較的狭い範囲から次第に広くなり,今日ではグラム陽性菌,グラム陰性菌は勿論,リケッチア,ビールス,原虫類に至るまで抗菌作用を発揮するに至つた.抗生物質の進歩と共に産婦人科領域においても治療面,診断面には大きな変化がもたらされた.ことに戦前にしばしばみられた産褥熱は我々が日常遭遇することは殆んどなくなり,もし産褥時発熱をみても抗生物質投与により速かに治癒するようになつた.しかしさらに一歩進めてこれら抗生物質を予防的に使用すれば,産褥経過を極めて順調に経過させ得ることは容易なことである.しかしこの予防的投与こそ最も重要にして且つ必要なことである.さて今回フラジオマイシンと云う薬剤が1948年梅沢博士により発見されたが,本剤は強いまた広い抗生作用を有し,また耐性率も低く,また他の抗生物質との交叉耐性もなく,水溶液の状態でも極めて安定で,皮膚,粘膜に対する刺激性なく,腸間からは吸収されず全身的なアレルギー性反応を起さない等の特性を有する粉末であり,皮膚感染症に対する外用剤(谷奥,原田),小児下痢症,腸感染症の治療及び腸管手術の術前処理を目的とする内服剤として臨床的に用いられている.
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