講座
人工妊娠中絶の本態をさぐる—家族計画普及全国大会シンポジアム傍聴記
矢野 尚二
1
1厚生省公衆衛生局企画課
pp.26-31
発行日 1959年3月1日
Published Date 1959/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201641
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1.まえがき
傍聴記というようなものは,結局本人が耳で聞いたものを心で消化して,それを再び吐き出したものにならざるを得ない.従つて,受胎調節の学者でもなければ家族計画の識者でもない筆者が,この大会にたまたま出席して,一聴衆としてぼんやり聞き流していたものを文字に再現する段取りとなるのであるから,各権威者である諸先生が口ずから提供して下さつた.それこそ何れを取つても珠玉の名編揃いを,筆者の頭という粗悪なフイルターをなまじ通したため,恐らくはしにも棒にもかからぬしろ物となつてしまつたに違いない.ただ筆者が本誌編集部を通じて傍聴記を書いてくれないかと頼まれたとき,筆者が引受けてみようと決心した原動力は,シンポジアム3時間の間この会場を圧し去つた演者諸先生の気迫と,二千人に及ぶ全会衆の一体となつた熱意とに深く感銘していた矢先だつたからにほかならない.筆者としては,できる限りシンポジアムの真の姿を再現しようと努力したのだが,出来上つたものは以下のようなだ作であり,従つて座長先生始め演者諸先生が本編をもしも御覧になつたら,おそらく一々おしかりを受けるであろうと思うので,ここにあらかじめおわび申上げておく次第である.ありふれた言葉で恐縮だが,文責はすべて筆者一身にあるのである.なお御参考までに附記すると,筆者は43才の医師で2児の父,家族計画の主管課に最近来たばかりの新米である.
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