社会の動向
健保はどうなるか
長谷川 泉
pp.50-51
発行日 1958年5月1日
Published Date 1958/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201474
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日本のように貧しい国では,社会保障がある程度行きわたらぬと,非常に不幸な人たちが出ることになる.この社会は人間のより集りで構成されているから,周囲にあまりにも悲惨な,生活能力のない者たちが氾濫することは,社会不安を醸成し,ひいては社会の安寧を害することになる.社会の健全な発展が阻害されることになる.だから,人間がなまけ者になつてしまわぬ限界内において,あまりに困る人たちはお互に助け合わねばならぬということになる.
世は減税の時代である.これは,いちがいに選挙のための人気とり政策ばかりではなかろう.減税と云つても,国家予算の支出の額はへるわけでないから,税金をへらした分は,どこかでうめ合わせなければならない.減税とはいつても,それは低額の所得しかないものや,中間階級層の減税をするわけで,非常に高額所得のものまで減税するものではない.また直接税を減らすというのであつて,それらでへつた分は,間接税などで逆にとりたてることになるわけである.高額なものからは高い税金をとり,低額の所得のものからは税金をとらないか,とつても僅少にするのは,一種の社会保障的な考え方である.いやそればかりではない,高額なものからは税金をとりたて,収入のないもの,または収入の少いものには生活費を与えてやるというのは社会保障の考え方である.
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