解説
売春防止法の全面的施行を迎えて—性病予防との関連において
山本 二郎
1
1厚生省公衆衞生局防疫課
pp.30-33
発行日 1958年3月1日
Published Date 1958/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201439
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愈々この4月から売春防止法の罰則規程が全面的に発動され,組織化された売春窟にメスが加えられようとしている.一方ではそれに呼応するため婦人相談所の設置,婦人委員の任命等,更生しようとする婦人に対する相談機関の設置が昨年以来各都道府県によつて取上げられ,今年に入つてから婦人の更生には一段と拍車がかけられることであろう.又更生しようとする婦人に対する更生資金の貸付も昨年末以来始められている.又昨年末から今年の三月一杯迄の間に,更生しようとする婦人に対する性病の健康診断及び治療を全額公費(国2/3,府県1/3)で実施し,文字通り"きれいな身体"にして社会復帰してもらうだけではなしに,それらの婦人による社会への性病の伝播を防止しようとする所謂特別対策も実施にうつされつつある.
こうみてくると大変調子がよさそうであるが,実情はもつともつと理想に縁遠い.まだ婦人相談所を設置していない県が全国に十何県もあつて,厚生省で本年度(32年度)用意していたこのための予算8,000万円が使いきれなかつたと云う悲しい現実にも幾らもぶつかる.これらの県をもつと国が指導監督したらよさそうなものだとは誰しも考えるところであろうが,仲々地方の方ではぴつたりついてこない向もある様だ.
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