社会の動向
太陽族と挽歌族
長谷川 泉
pp.70-71
発行日 1957年9月1日
Published Date 1957/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201342
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学生作家石原慎太郎ものすところの「太陽の季節」が,出版ジヤーナリズムや映画界に太陽ものブームを呼び起したのちにあらわれたものは,無名の新人原田康子の「挽歌」旋風である.
太陽ブームは,もう過去のものとなつた.「太陽の季節」の作者石原慎太郎は,もう学校を卒業して一人前の社会人作家となつた.芥川賞の余光も,それほど神通力を持つものではない.ジヤーナリズムは気まぐれだから,目先の変つたものに飛びついてゆく.目先の変つたものは,その刺激になれつこになればもう用はない.陳腐なものになりおおせるからである.つまりはある限られた時期を咲くあだ花に過ぎない.そして,そのような時と所を越えていよいよ真価が光り出すものこそ本ものである.本ものは地味ではあろうが,ブームなどという際物的な人気とは別に永続し得るのである.
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