講座
離乳食
宮川 哲子
1
1国立東京第一病院
pp.62-71
発行日 1957年1月1日
Published Date 1957/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201199
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
離乳の理由
乳汁は主栄養素である蛋白質,脂質,糖質及び各種の塩類,ビタミン類を含んでいるので乳児はある期間その乳汁だけで完全に発育するのです.然し余り長く乳汁だけで栄養すると乳児に栄養障害が起るので離乳をして他の食物を加えるようにするのです.初め乳汁だけで完全に発育していたものが或る時期になると乳汁だけではいけなくなります.その理由としてはいろいろの研究があり種々の点が考えられていますが,それは栄養分の不足ということが考えられるのです.即ち(イ)乳汁は母乳でも牛乳でも鉄分が非常に少い生後6ヵ月位になると鉄分を食物としてもつと摂取しなければ不足を来たすようになります.(ロ)カルシウムは牛乳には比較的多いが母乳には極く少いのです.乳児はカルシウムの需要が多いのでだんだんに之を与えるようにします.(ハ)その他銅,沃度等いろいろな徴量に必要とする塩類も乳児の発育にしたがつて乳汁だけでは不足するおそれがあると考えられます(ニ)又各種のビタミンも含まれていますが乳児が発育するにつれて不足するものが出来て来るのです.ビタミンは母乳には比較的多いが牛乳,乳製品ではその不足が非常に起り勝であり,人工栄養の乳児は殊にV.Cの添加が生後すぐから必要とされます.V.Dも不足する懸念があります.その他V.B1,ニコチン酸等も不足するようになつて来ます.
Copyright © 1957, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.