--------------------
妊娠・分娩よもやま噺
庄司 忠
1
1山口県岩国病院
pp.64-71
発行日 1956年9月1日
Published Date 1956/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201130
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
第1章 中国地方の分娩
助産婦の分布している村邑に於ては,他の都市と何等変る所は無いが,辺鄙な地帯に於ては未だ取上婆に依るものが多い.取上婆とは部落の分娩経験者に助産を依頼する場合を云うので,多くは我国古来の風習たる出産である.即ち産婦を後から抱えて胎児を押し出す様な格好をする.従つて会陰は破裂するに任せ,破れても縫合しないので子宮脱出症や腟壁が此較的多く見られる.斯く記す筆者の生れは丁度49年前であるが,勿論取上婆たる伯母ツルによる坐産であつた.
一般に妊娠中よく働けと云われ,婦人といえども可成重労働をしている.従つて分娩予定日前に生れる場合が多く,お産は割合に軽い.然し予定日を少々超過しても平気でいる者がある.其上難産に陥ると初めて村の助産婦を招びに来るから,助産婦氏もたまつたものではない.迷信は特に重んずる.妊娠中転ぶと臍帯纒絡が起る.かまどをつくと三ツ口即ち兎唇が生れる.33歳は女の厄だから産むものではない等言う.従つてこれらの婦人の人工流産は圧倒的に多い.
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.