講座
分娩第三期の諸問題〔2〕—剥離した胎盤の娩出
藤平 治夫
1
1都立広尾病院産婦人科
pp.20-23
発行日 1956年2月1日
Published Date 1956/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200997
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分娩第三期は胎盤の剥離と剥離した胎盤の娩出という二つの過程に分けることが出来るが,この内胎盤剥離の生理と異常については前号で述べたので,本稿では剥離した胎盤の娩出異常並びに胎盤の一部残留に就て述べることにする.この二つの過程の境界は前号で述べた各種の胎盤剥離徴候の有無によつて決定きれるわけであるが,異常の場合は決定が時に困難で,之の何れに属するか不明のことがある.この際は単に稽留胎盤と診断し,子宮内の用手触診によつて始めて胎盤剥離の障害によるものか,或は剥離した胎盤の娩出障害によるものかを決定することが出来る.
正常の場合剥離した胎盤は陣痛によつて子宮下部に圧出され,ついで腟に達する.腟は下降してきた胎盤によつて拡大され,このため反射的に腹圧が催起され,これによつて胎盤が娩出する.更に胎盤及び後血腫自体の重量,並びに腟壁筋層の収縮も胎盤娩出に関係する.卵膜は胎盤の下降につれて牽引され,壁脱落膜海綿層に於て子宮壁より剥離し,胎盤に続いて娩出し,こゝに分娩は完了する.子宮底は臍下2〜3横指に下り,子宮は小児頭大となる.胎盤の娩出様式は母体面,胎児面,或は半母体面に分けられるが,前号に述べた通り,ある特殊な場合を除いては,これは胎盤の剥離様式を示すものではなく,胎盤の産道通過の状態によつて左右される.
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