今月の言葉
子供と社会
pp.5
発行日 1956年2月1日
Published Date 1956/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200994
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近頃は都市における交通事故もずい分多いが,それにもまして各種の犯罪が,しかも若い人の凶悪な犯罪が多くなつてきた.これの原因としては,大規模な殺人を行う戦争の影響もあり,また生活難も一因であろうし,必ずしも単純なものではない.しかし青少年に最も大きい影響を及ぼしているものは社会環境の変化であろう.家庭において,また学校において,どれほどよい教育をしても社会環境が悪ければ,どうしても悪くなりやすい.一歩街に出れば,官能を強く刺激する娯楽機関から競輪,競馬など一こく千金を夢みる「かけ」のはんらんである.またラジオにおいては,クイズものの大流行で,ちよつとした思いつきで,2千円とか3千円が手に入るのである.一方においては,真面目に働こうとしても,適当な職がないという状態では,どうしても安易な,また悪い方向に進みがちとなる.
また青少年に強い影響をもつ映画はどうであろうか.人間の本能を強く刺激するような露骨な性映画か,殺人ものである.まげ物ならば大部分が刀をふりまわすチヤンバラもの洋画ならばピストルをもつたギヤングものが大部分である.たとい結末は悪がほろびることになつているとはいえ,安易に人を殺傷するようなことを見せびらかして良いはずはない.もつと人の心を清め,楽しませ或は生きる喜びを感じさせるような映画ができないものであろうか.
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