書評
—孝橋 正一—社会事業の基礎知識,他
pp.40-41
発行日 1955年2月1日
Published Date 1955/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200794
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私たちの生活は絶海の孤島にでも住まぬ限り社会的なものから切り離されて,純粋な個我として生きてゆくことはできない.その関係は大なり小なり社会的なつながりを持つている.それは自由党の内閣であつても同じことであつて,社会党の内閣にでもなれば,もつと社会保障的な考え方が徹底して,個人よりも社会全体としての向上,社会政策としての政治が行われてゆくということになるであろう.現在のような社会機構のもとでは貧しい者と富める者との差がでてくるのはやむを得ないことであり,人の肉体的条件を考えてみても生れつき丈夫なもの弱くてしよつちゆう病気をする者があるように,差がでてくるのはまぬがれない.したがつて,なんとかして貧富の均こうをはかり,あまりに貧しいために人間としての生活が送れないようなものはあるレベルにまでは引き上げて,人間らしい生活が送れるように,政策をして考えてゆくことが,必要になる.なんらの施策もなしにほつておくならば,あるいは人の善意や宗教心だけに頼つているならば,この世の中はあまりにも悲慘なものになつてしまうからである.
世界の人々がだんだんとふえ,そしてそれに応じて新しい創意工夫による生活水準が上つてゆかないとするならば,やはり人間の社会においても弱肉強食の状態が起つてきて,人間性にもとつたことが現実となる.
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