北京超特急

　解説上海から北京へばく進する列車を舞台に，暴虐と戰慄の支那大陸の樣相を描く巨匠，ウイリアム・ディターレの最新野心作である．

　陰謀，暗殺の公然と行われる混迷の支那大陸を横断する急行列車に乗り合せた五人の人物を通じて，現代支那の不安な樣相がリアルなタツチで展開される．医師と謎の女ダニエルとのロマンチックな感情のもつれをのせて，上海をすべり出した列車に，やがて奇怪な暴力事件が生じ，恐怖と不安の空気をはらんだまま，列車は走りつづける．狹い列車内に閉じ込められた人々の焦燥，恐怖をクライマツクスとする匪賊の襲撃，戰慄の残虐行爲。相次ぐ死の危険を冒して，乗客の安全のために銃を握り，敢然と応戰するヒューマンなアメリカ人医師．興奮とスリルのうちに，支那大陛のあけぼのを描こうとするアメリカ映画中の異色作である．