口絵
愛と科学の樂園—精神薄弱児の教育
pp.2-4
発行日 1954年8月1日
Published Date 1954/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200657
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東京麻布の愛育研究所では,去る6月22日,特別保育の教室を再び落成しました.梅雨にけむるこの日,舟型の教室は,新井善太郎理事長によつてテープが切られ,ふしあわせな子供たちにわづかながら,ここに光の道がひらかれました.「知能指数75以下の者を精神薄弱児という」このような定義をくだされる子供たちが,日本の学令児童の約3%いるといわれます.その数の5〜60%は遺伝,そのほかアルコール中毒,梅毒,結核,胎生中の母体の疾病出生時の障害小児麻痺,乳児期の高熱,極度の消化不良,栄養障害が原因となつています.ここ愛育研究所特別保育室では,昭和13年末から草創期,黎明期,形成期,空襲から再開期など茨の道を経て,昭和25年保育室(幼児)を建築,構成機に入り,再び新築(児童)をみております.そして生活習慣の確立を目的に好ましい社会態度が養われています.不幸を背負つてしまつた者にできるだけの手を尽すと同時に,原因をさかのぼつて異常児の出生を未然に防がなければなりません.同程度の子供と明暮れ,深い愛と正しい教育に導かれる特別保育室は彼らのこの上ない楽園です.一方適切な教育を受けられずにいる異常児の多いことを考えましよう.
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