社会の動向
首相の外遊目的は何を狙つたか?
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pp.18-19
発行日 1954年7月1日
Published Date 1954/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200640
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吉田首相の外遊が延期した.国会は未曾有の大乱鬪の場となり,その実況はテレビジヨンの前に国民の眼をくぎづけにしたばかりでなく,遠く電波に乗つて各国を驚かせた.その結果,日本の国際信用はがた落ちになつたが,同情的な見方をしてくれる者でも,このような悲しむべき事態の中から右翼の抬頭をおそれる声が聞かれた.民主主義の最高の場である議会のこの醜態は,いよいよ国民の政治に対する不信の念を増大させることになつた.民主主義のルールは破られ,クーデターの手本が示されるようなのもである.
駐英大使を最後に,外交官としての足を洗つた首相としてみれば,戰時中や戰後の外交の長い室白時代をへて,にわかに生れ出た多くの大使,公使連の幼稚園外交ぶりには,はがゆくて見ちやおれんといつた気持があつただろうし,たまたま,戰後の再建の軌道をまがりなりにも設け終つて,やれやれというところであるから,ここらで一つお世話になつた国国にお礼まいりをし,かたがたたがのゆるんだ外交陣に一つ本当の外交というものを教えてやろうという気にもなつたのであろう.
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