講座
妊娠に關係の深い黄体ホルモンについて
赤須 文男
1
1東邦大学
pp.10-14
発行日 1954年3月1日
Published Date 1954/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200557
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産科で古くから知られており,又,妊娠にとつて非常に大切なホルモンに黄体ホルモンがある.黄体ホルモンはその本当の作用はよく分つていない面が非常に多く,今後大きな研究対象となつている.
黄体ホルモンは,主に卵巣の黄体で作られるが,胎盤でも或は又,少しは副腎でも作られる.かくの如く黄体以外からもつくられるので,黄体ホルモンと呼ぶのは不適当ということになり向妊娠ホルモンとかプロジエスチンとか或は又,ルテオイドとか呼んでいるが,純粹にとり出された結晶はこれをプロゲステロンと呼んでいる.けれども現在やはり黄体ホルモンと呼ぶ人が多く,黄体ホルモン樣作用をもつものを一所にしてプロゲストーゲンとも呼んでいる.発情ホルモン(卵胞ホルモン,エストロゲン)で子宮粘膜が増殖し,そこへ黄体ホルモンが作用し,分泌相となり,内膜の細胞も変形し粘膜は厚くなり,個々の細胞はグリコーゲンや共他の栄養物で充されるが,これは妊卵が着床した場合にそなえる準備工作である.こうした変化を起すのは,卵巣の黄体から分泌される黄体ホルモンの作用であるが,もし妊娠しなければ黄体は萎縮してホルモン分泌を中止してしまうので,子宮粘膜も剥がれ,月経血と共に子宮外に排出されてしまうのである.
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