特集
精神薄弱兒
高木 四郞
1
1国立精神衞生研究所兒童精神衞生部
pp.21-23
発行日 1953年7月1日
Published Date 1953/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200384
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精神薄弱兒とは
精神薄弱とは,いいかえれば低能白痴のことである.その中には,いろいろな原因で生じたものが含まれているが,要するに腦の発育が遲れているために,精神の発達,ことにちえの発達が不十分なものを総称して精神薄弱兒というのである.いろいろな原因にようものが含まれているのであるから,これは一つの病名というようなものではなく,医学上でいう「症候群」と考えればよい.
等しくちえが遲れているといつても,その程度は,人間の身長がさまざまであるように,極く軽くて常人とほとんど変らない程度のものから非常に重くて言語もほとんど発達せず,人間らしいちえの閃きも認められないようなものに至るまで,さまざまである.そこで精神薄弱を普通そのちえの遲れている程度によつて白痴・痴愚・魯鈍の3つに分ける.白痴は程度の一番重いもの,魯鈍は一番軽いもの,痴愚はそれらの中間にあるものである.どんな基準によつて分けるか,ということは,学者によつてまちまちで多少ずつちがうが,この3つに分ける点は,どの国でも,どの学者でも同じである.現在最も廣く行われている基準にもとずいていえば,白痴は発達程度が標準兒の4分の1の程度以下で,教育の全く不可能なもの,痴愚は標準の半ば以下,魯鈍は4分の3以下で,一人前とはいえなくても,ある程度教育の効果を擧げ得るものと考えてよい.
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