今月の言葉
科学的なものの見方
pp.5
発行日 1952年12月1日
Published Date 1952/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200221
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元来日本人は直観的にものを考える国民性をもつが,この傾向は殊に女の人に於て甚しい。この直観的にものをみるということは,物事を勘によつて解釈する事と相通ずる。たしかに日本人の直観は発達しており,勘の力は劣つていない。しかし,一面この直観的に物事を判断するという事が,我国に独創的な発明や,発見のすくないという事とも相通じている。ドイツは,今では戦争に破れて混乱しているが,戦前その国の科学は世界一流であつた。元来ドイツ人は直観の劣つた国民であり,このため,一見愚鈍にすらみえる。しかし,この愚鈍な国民が独創的な物の考え方を発達せしめた理由を一応考える必要がある。
直観の発達した人々は,物事を,はじめからきめてかかる傾向が強い。実驗をしないで,その結果を先に推量してしまう。自分で一定の結果をきめてかゝるから,実驗しないですませる。しかし人間の推量というものは案外,あてにならない事があり,実験してみると意外な結果がでることがある。ここに科学の発達する機縁がある。
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