講座
赤沈の新しい知識
塚本 重彦
1
1東京逓信病院産婦人科
pp.21-24
発行日 1952年5月1日
Published Date 1952/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200101
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赤血球沈降反應又は赤血球沈降速度という言葉は1917年12月1日,ストックホルムに於ける外科婦人科學會に於て,スエーデンの病理學者ファーレウスが始めて提唱したことに端を發したのです。彼は,この時,妊婦に於ては非妊婦より赤沈速度が速いから妊娠の早期診斷に役立つと發表したのですが,その後各種の疾患に就ても同樣の現象があり,診斷上に極めて意義があることを強調しました。更に進んで彼はこの現象の本態に就ても廣汎にして緻密なる研究を行い,赤沈理論として有名なる所謂荷電説は實に彼によつてその基礎を與えられたのです。その後,現在に至るまで,諸外國は勿論,日本に於ても多數の學者が臨床的或は基礎的研究を續行し,今や赤沈反應は最も普遍的且つ有用なる補助診斷法としての位置を獲得していることは多言を要しません。
さて赤沈現象というのは,血液に或る抗凝固剤を加えて靜置すると赤血球が下方に沈降し,透明なる血漿の部分が上榔に残る分離現象ですが,この一見,極めて簡輩に思われる現象も,その本態乃至理論ということになると,未だに多くの不明な點が残されているのみでなく,ある點では相反する意見も呈出されている歌態でありまして,首尾一貫せる理論というものが確立していないように思われます。
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