講座
助産婦の心得
高楠 榮
1
1元城大
pp.20-22
発行日 1952年1月1日
Published Date 1952/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200008
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
分娩を取扱う女性を昔から産婆と呼び分娩其者を不淨の事と解釋した時代には産婆と云えば一種不潔の仕事に從事する人かの感じを一般に與えておつたのであるが實際分娩其ものが母兒兩者の生命を左右する重大な事柄であることを知らなかつたからである。又古くは難産や産後の疾患で不幸の轉歸を取つても,それは其人の運命で,何等施すべき術は無いものと諦め,分娩を至極輕く考えて居ったのである。併し産科學が發達し,分娩の重大性が認識せられる樣になつてから,産婆も單に技術的練習のみならず,學術的智識を具備することが必要と考えられる樣になり,自然産婆の責任も重大視され,随つて其地位も向上したので,近來産婆と云う呼稱を改めて,助産婦とし,助産學なるものも種々講究せられるに到つたのである。夫れで今日では産科醫に併行して,助産婦も科學的智識を有する有識の存在として,一般に認められ,且つ尊敬せられる様になつたことは誠に喜ばしいことである。然らば助産婦其者は正規の智識と練磨せる技術だけで満足すべきかと云うに決して然らず助産婦其者は治療に當る産科醫よりもより以上に各家庭と密接な關係を持つものであるから一般家庭婦人としての常識と教養の外に封外的の修養が肝要である。依つて私は左に助産婦として心得べき數項を擧げて指針としたいのである。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.