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はじめに
多くの福祉事業所が作成を求められている災害準備に関する計画(以下,防災計画)は主に4つある.① 消防法(総務省,1948年)による防火防災計画(防災は2008年に追加),② 水防法及び土砂災害防止法(国土交通省,2017年)による避難確保計画,③ 介護保険法等による非常災害対策計画(厚生労働省,2017年),④ 介護保険法と障害福祉サービス等報酬改定による業務継続計画(business continuity plan:BCP)である.避難確保計画は,津波,原子力発電所事故に対する危険地域ではそれぞれに作成を求められる.避難確保計画と非常災害対策計画は合体案1)および2つの計画の内容が適切かを点検するための点検マニュアルも公開されている2).
BCPは,新型インフルエンザ等発生時の業務継続ガイドライン(2005年,厚生労働省)から,社会福祉施設・事業所における新型インフルエンザ等発生時の業務継続ガイドライン(2019年,厚生労働省)に発展した.さらに,介護施設・事業所における自然災害発生時(および新型コロナウイルス感染症発生時)の業務継続ガイドライン3),同研修動画(2020年,厚生労働省),障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン,ひな形および研修動画と障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン4)(以下,BCPガイドライン)が公表され,同研修動画も開発中である.
これらの防災計画の様式は全体像を把握するには便利だが,個々の事業所や利用者の特性に合わせた避難方法や避難生活の好事例には乏しいという課題がある.残念ながら,すぐに障害福祉事業所の災害準備を完成させることは難しく,各事業所で利用者・家族とともに小さな試行を開始し,業種内および他業種(地域や行政)と成果を共有し,毎年更新しながら知見を発展させ蓄積することが重要と考えられる.福祉事業所職員に防災の研修を提供し,事業所間および地域での共有機会を設定することは自治体に求めたい.福祉先進国の北欧は地震がないため,日本の事例が環太平洋諸国および世界の最先端である5).本稿では,先進的な試行例と共有例を紹介する.
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