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はじめに
発達期嚥下障害の症例は,中途障害で嚥下障害を来した症例とは原因・障害の様相・対応などあらゆる面が大きく異なる.発達期嚥下障害のリハビリテーションに携わるものは,その違いを十分認識したうえでかかわる必要がある.
嚥下機能は生後,数か月から数年をかけて身体・精神の発達とともに習得される機能であるが,発達期嚥下障害はこれらの前段階,あるいは途中の段階でのつまずきから起きるので,「失った機能を取り戻す」という視点ではアプローチできない.また,症例自身に獲得体験がなく,「口から飲食物を摂取し,満足感や快感を得た」経験がまったくないか少ない症例が多いので,本人から積極的に口から食べることに向かおうとするモチベーションが低い.場合によっては口に飲食物を入れることを強く拒否する場合もある.
また,発達期嚥下障害を呈する症例はさまざまな疾患を抱えている場合が多く,それらの治療が経口摂取の妨げとなる場合も多い.疾患以外にも低出生体重児など未熟で出生した場合には,呼吸機能や消化機能の発達が十分でないために経口摂取が進まないこともある.
発達期嚥下障害を呈する症例の疾患分類について表1に示す.これらの疾患や合併症の発症を注意深く観察しながら,慎重にアプローチが進められるべきである.
発達期には摂食嚥下機能の成長による変化もあるが,身体機能・精神機能の発達もまた顕著な時期である.そのため,障害に対するアプローチと全体的な発達の様相を並行して見守り,支援していく必要がある.同様の理由で,摂食嚥下機能の発達のみをみるのではなく,栄養様態も確認し,発達期として十分な栄養摂取ができているか,安全で症例自身に負担のない栄養摂取方法が選択されているかも家族と一緒に考え,検討しなければならない.
低栄養で明らかに成長が促進されていないようであれば,経口摂取の量を減じるか中止にするかして経管栄養の手段を選択することも,臨床上ではよくあることである.発達期へのアプローチで最も特徴的なのは,これらの観察や判断,経口摂取機能向上のためのアプローチを行う主体が医師やセラピストでなく家族であることである.家族の理解と合意がなければ,どのようなアプローチを考えても成功はしない(施設入所児者であれば,看護チームが家族の役割を果たす).
家族とセラピストが同じ位置に立ち,同じ視点で症例に向かうための第一歩は,詳細な評価で現状を確認し合うことである.そこで確認がとれれば初めてアプローチのためのスタートが切れる.以下,初診から評価,アプローチ開始までの流れをまとめる.
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