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はじめに
摂食嚥下障害に対する理学療法は,誤嚥性肺炎発症後の呼吸理学療法を行う役割から,摂食嚥下活動を円滑に行うために必要な姿勢・呼吸を整え,座位保持機能の向上を図り,姿勢保持や努力性呼吸から分離した摂食嚥下活動が行えるよう準備する役割に変化しようとしている.このようなパラダイムシフトは最近の動きであり,まだ多くの理学療法士が知識や技術をもって取り組む状態にはなっていない.2015年に日本理学療法士学会に栄養・嚥下理学療法部門を設立してから急速に啓発活動を進めているところである.
現状では,摂食嚥下障害に対する専門的なリハビリテーションは主に言語聴覚士が行っており,間接的なアプローチから直接的アプローチまでを担っている.しかし実際には,嚥下器官に対してアプローチする前の座位姿勢に対する準備が必要なケースが多く,準備段階のアプローチに難渋して多くの時間がかかり,嚥下器官に対する運動練習や食物を使った直接的アプローチに割く時間を圧迫している状況である.もともと,座位保持機能や姿勢筋緊張,呼吸機能へのアプローチは理学療法士の専門領域であり,摂食嚥下機能とそれらのかかわりを理解すれば,これまでの技術を応用して対応することが可能である.
2019年,筆者は本誌で企画された「摂食嚥下リハビリテーションの未来」という特集のなかで,理学療法士が果たしていくべき役割について述べた1).本稿では,特に脳卒中後に生じる摂食嚥下障害に焦点を当てて,理学療法士が多職種と連携を図りながら,直接的アプローチ開始のための準備を行うためにどのように嚥下に関連する種々の運動機能を高めていくか,そのための評価とアプローチについて具体的に示したい.
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