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はじめに—訪問リハビリテーションの現状と課題
新宿区医師会では,新宿区との共同事業として年度ごとに課題別連絡会議が年2回開催され,地域医療における問題をテーマとして取り上げ,多職種が参加して議論が行われている.2016年度の課題別連絡会議のテーマは,「新宿区の地域包括ケアにおけるリハビリテーションの役割」で,新宿区内の医師会に属する開業医(訪問診療医を含む),慶應義塾大学病院や国立国際医療研究センター,JCHO東京新宿メディカルセンター,東京都保健医療公社大久保病院のリハビリテーション科の医師や理学療法士(PT),訪問リハビリテーション事業所,訪問看護ステーションと,新宿区役所の福祉部および健康部などが参加していた.
この課題別連絡会議では,病院から退院して地域に戻る際のリハビリテーションの質と継続性,病院から地域リハビリテーションにつなげていく連携方法について議論された.リハビリテーションの適応は脳卒中や骨折などによる身体機能障害に加え,心不全や誤嚥性肺炎,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD),がん緩和,摂食嚥下機能障害など多岐にわたる.超高齢者の入院においては「動かない」から「動けなくなり」,結果として廃用性変化の進行に伴い日常生活動作(activities of daily living;ADL)が低下し,しばしば「内科に入院したら病状は安定したけど,寝たきりになった」という廃用の悪循環を認める.このため入院直後からできるだけ早期にリハビリテーションを開始し,入院期間の短縮が重要であると病院のリハビリテーション科の医師は考えていた.
また,病院間で比率の違いはあるものの,一致する見解として急性期病院から患者の約6〜8割がリハビリテーション不十分な状態で自宅へ直接退院していた.すなわち,一部の患者だけが回復期病棟経由で退院しているという現状が存在している(図1a上段).急性期病院から自宅への直接退院が多いことから,退院後の訪問リハビリテーションの重要性が高まっており,病院との連続性と質の確保が必要となる.このことから,急性期病院から在宅へ円滑にリハビリテーションを移行するシステムの構築と,訪問診療医と訪問リハビリテーションとの効率的な情報共有の手段が求められていた(図1a下段).
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