書評
池淵恵美(著)「こころの回復を支える—精神障害リハビリテーション」
武田 雅俊
1
1大阪河﨑リハビリテーション大学認知予備力研究センター
pp.603
発行日 2019年6月10日
Published Date 2019/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201673
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「精神障害リハビリテーション」をライフワークとして実践と研究をリードされている池淵恵美先生が,帝京大学主任教授としての定年を迎えられるのを機に上梓された本書には,40年間の「精神障害リハビリテーション」第一人者からのメッセージが詰め込まれており,精神障害をもつ人への専門的援助について,精神療法家とも認知行動療法家とも薬物療法家とも違うスタンスが提供されている.著者は,専門家の視点からのリハビリテーション(社会参加などを目標とする客観的リカバリー)と当事者の視点からのリカバリー(満足できる自分なりの生き方を達成するパーソナルリカバリー)とが統合されて初めて本当の意味でのリカバリーが達成できると考えており,エビデンスに基づくパーソナルリカバリーの実践をめざした活動の軌跡が記述されている.
リハビリテーションとは,脳とこころの機能回復と共に当事者が社会の中での生き方や人生を取り戻していくことを支援するアプローチであるが,著者が伝えたいことは,精神科治療にリハビリテーションが加わることによって,当事者がリアルワールドで生活していく支援が可能となるとの指摘である.精神科医,看護師,心理士,社会福祉士,リハビリテーション専門職など精神障害の臨床に携わる全ての人に知ってほしいメッセージである.
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