書評
―井上新平,安西信雄,池淵恵美 編―精神科退院支援ハンドブック―ガイドラインと実践的アプローチ
福田 正人
1
1群馬大学大学院神経精神医学
pp.1029
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102005
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退院支援実践例が充実した,理解と実感を助けてくれる1冊
日本の精神科医療は,重症化した精神疾患患者に入院医療を提供すること,そのための医療施設を私立の精神科病院に求めることを,国が施策の中心としてきた歴史がある。そのために精神科病床が全病床の20%以上を占め,しかも長期入院や社会的入院の患者が多いという,世界の中で例外的な状況にある。退院を支援するためのハンドブックとしてガイドラインと実践的アプローチを示した本書は,そうした日本の精神科医療の残念な現状を反映している。
本書は,「退院支援ガイドライン」と「ガイドラインに基づく退院支援の実践」の2部から構成されている。第1部は,厚生労働省精神・神経疾患研究委託費の研究成果を基にまとめられた,46ページからなるガイドラインの紹介が中心である(主任研究者:安西信雄「精神科在院患者の地域移行,定着,再入院防止のための技術開発と普及に関する研究」)。第2部ではガイドラインの具体化として,前半で退院支援の実践について8つの側面を詳説したうえで,後半で「特色ある取り組み」として8つの実例が紹介されている。
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