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本書は,好評であった『運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学』(医学書院,2012年)の続編ともいうべき書籍である.本書の第一の特徴は超音波画像で身体内部の動きを探りながら,理解を深めようとするものである.近年の運動器分野において,超音波画像は非侵襲性と手軽さもあり徐々に重要な位置を占めてきていると考えられるが,著者のさまざまな読影上の工夫によって解剖学を深く理解し,さらに運動療法へ展開する試みである.実際の超音波画像は医学書院のホームページから参照できる形になっている.頸椎症,片麻痺の肩関節痛,投球障害肩,テニス肘,肘関節脱臼,橈骨遠位端骨折,腰痛,片麻痺,変形性股関節症,ハムストリングスの肉ばなれ,膝蓋大腿関節症,変形性膝関節症,アキレス腱損傷,シンスプリントと多種類の疾患についてのポイントを供覧しながら,解剖学のポイントの記載がされている.
さらに著者は運動療法の意味を超音波画像を通じて行うことで,頭で考えていたイメージとの違いについても記載が多くなされている.以前と比較して超音波画像を診療時間内に参照している理学療法士は増加していると考えられる.しかしながら,それを実際の臨床活動に活用可能な理学療法士はまだ限られていると考えられる.すなわち,多くの先駆者は施行錯誤をしながら有益性を得るまでに多くの時間を割いてきたことは間違いない.解剖学を構造としての視点からだけではなく,機能的観点へ広げることが,本書の大きな目的であろうし,また理学療法士のアドバンテージとなり得ると思うと本書の果たす役割は大きい.本書はデータを視覚的に得ることで,先駆者の得た情報を得るまでの時間を短縮可能とする貢献度が大きい.逆にそのプロセスをつかむための自学自習の題材として役立つと思われる.つまりはトレーニング書としての利用である.
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