投稿論文 論説
同期するミラーニューロンと身体から私と汝,統合失調症の病態と治療関係をみる 現象学から西田哲学・神経現象学へ
内村 英幸
1
1福岡心身クリニック
キーワード:
Dopamine
,
Gamma-Aminobutyric Acid
,
医師-患者関係
,
共感
,
コミュニケーション
,
自我
,
統合失調症
,
認知行動療法
,
Glutamic Acid
,
ミラーニューロン
,
感覚運動皮質
,
現象学
,
他者
,
風景構成法
,
箱庭療法
,
西田幾多郎
Keyword:
Cognitive Behavioral Therapy
,
Dopamine
,
Ego
,
Communication
,
Glutamic Acid
,
Empathy
,
gamma-Aminobutyric Acid
,
Physician-Patient Relations
,
Play Therapy
,
Schizophrenia
,
Mirror Neurons
,
Sensorimotor Cortex
pp.87-98
発行日 2023年2月5日
Published Date 2023/2/5
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「自己が行動している時も,他者が同様の行動をしているのを見た時も活動する」という自己と他者を共通表象するミラーニューロンの発見によって,「私と汝」の関係は,哲学,心理学のみでなく生物学でも論じられるようになり,神経現象学の時代になってきた。特にMerleau-Pontyの身体論が援用されてきた。しかし,ミラーニューロンは,「私」ではなく,「私たち」を反映しており,「私」から出発して「汝」を論じる西洋哲学・現象学よりも,「私」と「汝」を内包する「私たち」から出発する東洋哲学・西田哲学に拠る方がより適切であることを強調した。ミラーニューロンシステム(下前頭回・運動前野,一次運動野,下頭頂葉)は,西田の「絶対無の場所」における「私と汝」の等根源的な共在に関連した生物学的基盤と考えられる。さらに「絶対無の場所」の異常による統合失調症の自我障害や幻聴などの異常体験には,ミラーニューロンシステムを基盤にした「社会性関連回路」(前頭-頭頂-側頭領域)のドパミン系とグルタミン酸-GABA系の障害による脳波に見られるカオスの失調やγ波同期の失調による自己組織化の破綻が深く関与しているようである。抗精神病薬によってこれらの「同期性/自己性の失調」の修復が促され,「絶対無の場所」である「気」の領域での「私と汝」の安心・安全な関係が,各療法の根底で開かれてゆくことの重要性について論じた。
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