視点
21世紀に向けての地域保健
阿彦 忠之
1
1山形県村山保健所
pp.306-307
発行日 1999年5月15日
Published Date 1999/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902072
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地域保健の市場化
「ビッグバン」という言葉が流行している.宇宙創造につながる大爆発ほどではないにしろ,新しい時代に向けて「大改革」が必要な分野で頻繁に使われている.火付け役となった金融ビッグバンの場合は,銀行,証券会社,保険会社などの業種の壁がなくなり,国境を越えた市場化と情報化によって業界再編が加速して,新たなサービス体系が創造されるという意味のようだ.
われわれに身近な分野では,高齢者の保健・医療・福祉に関するビッグバン,すなわち公的介護保険制度の施行が目前に迫ってきた.このビッグバンも,金融界との共通点がかなりある.例えばホームヘルパーの養成だけをみても,福祉機関のほか,警備会社,進学塾,あるいは農協など,数多くの団体が積極的に参入している.これまで異業種と思われた分野を巻き込んで供給量を早急に増やし,かつ,利用者側にサービスの選択権を与えることで市場原理が働き,サービスの質も保てると説明されている.伝統ある福祉施設であっても,狭い意味の専門性にあぐらをかいて努力を怠れば,利用が減って淘汰されるというシナリオだ.でもその先には,どのような社会が創造されるのだろうか.将来を予測するにはまだまだ情報不足のため,希望よりも不安のほうが大きい.
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