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はじめに
歩行の運動学的な側面(関節角度変化)を計測する手段として,これまでいろいろな方法が計測技術の進歩と共に開発されてきた.Chao1)はこれらの方法を7つのカテゴリーに分類しているが,このなかで現在最も用いられている3次元計測方法は,electro-optical methodに分類される輝点位置計測装置によるもの2-4)で,輝点で発生する信号やそれを記録する方法はシステムによってさまざまであるものの,関節運動を算出する基本的な理論は同じと考えられる.
すなわち,まず空間内に任意の3次元軸を設定し,空間内の点の位置をこれによって定義できるようにする.これにより空間内の剛体の位置と方向は,剛体上に固定した直線上にない3つの点から計算できるようになり,さらに2つの剛体をリンクする関節の動きは,リンクされた剛体の位置と方向が変化する際の差から計算される.
近年の計測技術の進歩は,空間内におけるこれら点の位置をかなりの精度で計測することを可能にしたものの,歩行計測では通常体表面に装着されたマーカーでこれらの固定点が代表されるため,そこから計算される関節の動きは,結局のところマーカーの体表面への固定位置に左右される.
人間の体は剛体ではなく弾性を有し,動きに伴ってその形や表面と関節の位置との関係を微妙に変えている.よって,electro-optical methodで体表面にマーカーを固定する限りは,それから計算される関節角度の測定精度には限界が生じてしまう.
また,もう一つ問題なのは,体表面にマーカーを固定する場合,その位置をいつも一定にすることが難しいことで,これは計測の再現性に影響する.このため,これまで報告されてきた3次元運動学的歩行分析では,関節角度変化の大きい矢状面内の測定ではその信頼性が確かめられているものの,前額面内および水平面内においては,十分な信頼性が確立しているとは言えず,これらの平面内における測定結果の再現性や多施設間でのデータの互換性に問題があることが指摘されている5-8).
そこでわれわれは,従来のカテゴリーには分類されない新しい測定方法を用いて,運動学的3次元歩行分析システムを構築した9).
このシステムの特徴は,関節角度の測定に電磁場を利用している点で,このシステムから得られた歩行中の各下肢関節角度は,矢状面内のみならず前額面内および水平面内においても臨床的に十分な精度で測定が可能で,しかも実際の歩行計測においても再現性を備えている点である.以下,このシステムについて紹介する.
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