Japanese
English
特集 平衡機能障害
運動失調と平衡機能検査
Ataxia and Equilibrium Function.
林 良一
1
Ryoichi Hayashi
1
1信州大学医学部第3内科
1Department of Medicine (Neurology), Shinshu University School of Medicine
キーワード:
立位姿勢障害
,
歩行障害
,
反射
Keyword:
立位姿勢障害
,
歩行障害
,
反射
pp.825-829
発行日 1998年9月10日
Published Date 1998/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108745
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はじめに
平衡機能に関わりを持つ主な感覚系は,前庭迷路・視覚および体性感覚であり,それを統合しているのが小脳である.図1にその関係を模式図的に示してある.図には,各感覚器から中枢へ,そして中枢から筋などの効果器へと一方向のみを示しているが,筋から再び中枢にもどるフィードバック系も重要である.
平衡機能の障害は上記のいずれの部位の障害でも出現する.本稿で取り上げる運動失調ataxiaという言葉は,ギリシャ語で“lack of order”という意味で,Garcinは「運動失調とは,第1は随意運動の遂行がうまくできないこと,第2は姿勢の異常で姿勢を正常に保持するに必要な随意的あるいは反射的な筋の収縮が損なわれること」としている.
ataxiaは,1)脊髄後索・末梢神経,2)小脳,3)前庭,4)前頭葉の障害でみられ,立位姿勢保持,歩行を行わせることにより各責任病巣に比較的特徴的な症候を見いだせる.立位姿勢保持に関する平衡機能検査では,特に立ち直り反射検査では,準静的な状態で身体動揺の定量的な計測が主である.床反力軌跡と下肢筋電図には強い相関があること,かつ,図1に示したように筋は最終効果器として働くことから,平衡機能を評価するうえで床反力軌跡と下肢筋電図を同時に記録することは有用である.
本稿では,平衡機能検査の概略を述べ,さらにataxiaの立位姿勢保持および歩行の評価法について述べる.
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