Japanese
English
講座 老化と心身機能
1.老化のメカニズム
Mechanism of Aging.
平林 容子
1
,
小野 敦
1
,
井上 達
1
Yoko Hirabayashi
1
,
Atsushi Ono
1
,
Tohru Inoue
1
1国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター
1Cellular & Molecular Toxicology Division, National Institute of Health Sciences
キーワード:
分裂寿命
,
老化遺伝子
Keyword:
分裂寿命
,
老化遺伝子
pp.655-660
発行日 1998年7月10日
Published Date 1998/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108704
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はじめに
生きとし生けるものすべてに寿命があると信じるヒトは少なくない.しかし,単細胞生物は絶えず分裂を繰り返し,理想的には死は起こらない.つまり,寿命はないのである.ただ,単細胞生物を理想的に無限増殖させる環境は自然界には存在しないから,この環境との戦いのために生物はさまざまの知恵を獲得する必要があった.
多細胞生物の発生は,その一形態であるが,このためには,少なくとも“体”の構成成分の一部が細胞増殖を止める機構を獲得する必要があった.各々の細胞が自由勝手に増殖を続けるならば,個体の形態形成と維持は無理な話である.生殖細胞が接合の繰り返しによって無限寿命を維持するのに対して,身体の構成成分となる体細胞群の有限寿命化,そして,その結果としての“死の獲得”は,多細胞生物へ寿命を与えることになる.この寿命獲得こそが生命,個体ひいてはその社会(種)の進化を確実に固定し,生命体が逐次発達をとげる基礎となったのである.
本稿では,ここ数年の間に目覚ましく理解の進んだ個体の寿命と細胞の寿命の発現機構について概説し,“老化機構”について考える糧としたい.
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