巻頭言
非日常性,あるいは花火について
網本 和
1
1聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
pp.619
発行日 1998年7月10日
Published Date 1998/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108696
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リハビリテーション医療に携わるものにとって,「日常生活」という言葉ほど頻繁に遭遇するものはないだろう.リハビリテーション医療の目標として,分析の対象として,あるいは自立といえば「日常生活」を連想するのが普通である.ところが周知のように,この「日常生活」の表象は個々人で全く異なっていて,ある人には日常でもまた他の人には「非日常」となるので,カンファレンスなどではいわば同床異夢とでもいうべき厄介な事態が起こる.つまり「日常生活の自立」を共通の課題としながらも,具体的なイメージは違っていて,共同幻想を抱いているにすぎない.
特に,患者さん,あるいは家族の「日常生活」と,われわれ理学療法士のそれとは実は大変離れていることを経験する.患者さん,あるいは家族が「日常生活」という場合(身の回りのことができるようになればという時でさえ),歩行は言うに及ばず,バスと電車を使って通院,通学,通勤が可能となる程度と範囲を想定している.
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