脳血管障害 True or False
小脳に限局した障害では記憶・認知障害生じない?
前島 伸一郎
1
,
森脇 宏
1
1国保日高総合病院脳神経外科
pp.85-86
発行日 1998年1月10日
Published Date 1998/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108579
- 有料閲覧
- 文献概要
小脳は共同運動の中枢であり,反射から随意運動に至るまでの種々の段階における運動を制御している.小脳虫部の底面にある片葉と小節(古小脳)は脳幹の前庭系と関係し,その他の虫部(旧小脳)は脊髄小脳路からの線維を受けている.これらは姿勢の調整や体幹の平衡に重要な機能をもっている.小脳半球(新小脳)は皮質橋路からの入力と歯状核,視床,皮質路の出力による大脳・小脳ループにより,主として四肢の随意運動を円滑に行うための調整に重要な部分である1).
19世紀の初めに,Rolando(1809)は動物実験による小脳損傷において,運動障害は認めるが,感覚機能や生命活動のvital function,脳の知的活動は障害されないことから,小脳は随意運動の協調運動に関する中枢であると結論づけた2).しかし,近年,小脳病変を有する患者や健常人の神経放射線学的研究から,小脳と認知機能を関連づける報告がなされるようになり,高次の運動あるいは言語や学習などの非運動的な情報処理に対する小脳の役割が注目を集めている2,3).PETを用いたfunctional studyでは,運動機能に関しては,Primary motor cortexが対側小脳と関係するとされている4).また,大脳と小脳との間のネットワークは,従来,運動の制御・学習に関与すると考えられてきたが,最近は運動機能にとどまらず,行為に先行する運動前のプログラミングに関与すると考えられている5).
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.