巻頭言
医療の革新運動―プライマリ・ヘルスケア
大谷 藤郎
1
1国際医療福祉大学
pp.1127
発行日 1996年12月10日
Published Date 1996/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108253
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1973年にWHOによって提唱されたプライマリ・ヘルスケアの主張とは,「誰でもが,自分自身の手で,そのコミュニティに適合したところの簡単で,しかも満足のゆく方法で,基本的なヘルスケアの恩恵に浴することができるように戦略をたてる」ということであり,既存の硬直した医療システムのワク内だけに閉じこもるのではなく,発想を拡げて「日常の場を重視し,今より優れた方法で病を防ぎ,避けがたい病気や障害をやわらげ,また成長し,年老いて優雅に天寿を全うしよう」ということだった.そのことは必然的に権威主義的,密室的な傾向に陥っていた欧米の正統医療の固定観念を打ち破り,医学本来の理想の原点にたち返って,新しい視点から平等な健康をすべての人々に行きわたらせ,社会の正義を打ちたてようとしたものだ.
プライマリ・ヘルスケアの考えは世界各国,ことに開発途上国の医療関係者に多大の感動を与え,またたく間にエコーのように世界に拡がった.1978(昭和53)年,アルマ・アタ国際会議には,世界140か国の政府代表が集まり,アルマ・アタ宣言と22の勧告が採択されて世界に向けてアッピールされると,世界の健康と医療の革新運動として注目されるようになった.
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