Japanese
English
講座 子どもの神経心理学
1.小児神経心理学の現状と課題
Present Status and Problems of Child Neuropsychology.
長畑 正道
1
Masamichi Nagahata
1
1静岡県立こども病院
1Shizuoka Children's Hospital
キーワード:
標準的神経心理学的評価バッテリー
,
神経心理学的スクリーニング検査
,
側性
,
学習障害
Keyword:
標準的神経心理学的評価バッテリー
,
神経心理学的スクリーニング検査
,
側性
,
学習障害
pp.611-616
発行日 1993年7月10日
Published Date 1993/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107407
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はじめに
大脳皮質の局所的損傷によって生じる失語・失行・失認は19世紀の後半から研究が始まり,20世紀初頭までに一応の体系にまとめあげられた.この時期,失語・失行・失認は脳の一定の部位の損傷で生ずるという考え方で,古典論と呼ばれている.しかし,1920年代に入り,古典論に対して全体論の立場に立つ研究者から強い批判が出されるようになったが,古典論を包含した統一的な見解に達することのない時代が続いた.当時は末だ神経心理学という用語はほとんど用いられず,大脳病理学あるいは臨床脳病理学などと言われていた.しかし,1960年代に入ると様相が変り始めた.外科的に脳梁を切断された両断脳(split brain)についての研究が出発点となり,同一半球内あるいは左右半球の大脳皮質を連絡する線維の損傷で生じる離断症候群(disconnection syndrome)が注目されるようになった.さらに外科的に脳梁が切断されなくとも,左右半球の機能を別々に検査する両耳聴検査や半側視野検査が行われるようになり,左半球は主として言語機能を,右半球は音楽や図形的感覚を担っていることが明らかになってきた.このようにして,1960年代に入り再び古典論が見直されるようになってきたが,時を同じくして失語・失行・失認などを研究する学問が神経心理学と呼ばれるようになった.国際的な専門誌の1つであるNeuropsychologyは1963年に創刊され,1974年に刊行されたReitanおよびDavison1)のClinical Neuropsychologyは臨床的立場からの神経心理学の集大成である.
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