Japanese
English
特集 大腿骨頸部骨折の治療
大腿骨頸部骨折における手術的治療の最近の進歩
Current Concepts of Surgical Managements with the Development of Internal Devices for Fractures of the Proximal Femur.
伊藤 邦臣
1
,
大井 淑雄
1
Kuniomi Itoh
1
,
Yoshio Ooi
1
1自治医科大学整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Jichi Medical School
キーワード:
大腿骨頸部骨折
,
手術的治療
,
デバイス
Keyword:
大腿骨頸部骨折
,
手術的治療
,
デバイス
pp.13-17
発行日 1992年1月10日
Published Date 1992/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106979
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はじめに
過去7年間に当科および関連病院で治療された大腿骨頸部骨折は117症例である.性別の症例数は男性34例,女性83例で,女性の発生数は,男性のそれの2倍以上であったが,発生時の平均年齢は男性が68歳,女性が71歳で大きな差がなかった.60歳以上の高齢者で,しかも女性に多発する事実は,大腿骨頸部骨折の発生基盤に退行期骨粗鬆症が大きなウエイトを占めているのは明白である.したがって,治療の要点は高齢者にしばしばみられる治療経過中の合併症を可及的に回避する努力を払うことが肝心である.すなわち,正確な整復位で強固に内固定術を実施し,除痛を獲得して早期離床を可能にすることが大切である.これが成就されたならば,患者は術後のリハビリテーション・プログラムに円滑に乗り,寝たきり老人の発生や死亡率が激減する.さらにもう一つの点は,骨強度の減弱化の程度,骨折線の部位によって強固に固定ができるデバイスを慎重に選択することである.強固な固定に失敗すると,骨折部の不安定性による疼痛の残存,大腿骨頭の内反転位が原因となってベッド上訓練,離床訓練に著しい支障を招き,骨癒合が遅延して社会復帰が覚束かなくなる.
本稿では大腿骨頸部骨折の骨癒合率を高めた手術的治療について述べ,最近用いられている改良型デバイスと現在我々が考えている使い分け,その問題点について記述する.治療成積の向上は手術手技の進歩やインプラント材料,デザインの改良などが大きな要因であるが,その背景にある麻酔法の確立,リハビリテーションを含めた術後管理の向上にも大いに依存していることを強調したい.
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