書評
Ian Macnab & John McCulloch―Backache, 2nd ed
辻 陽雄
1
1富山医科薬科大学医学部整形外科
pp.251
発行日 1991年3月10日
Published Date 1991/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106758
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1977年の初版以来,本書は2度の重版を重ねて13年,ここに改訂第2版が出版された.言うまでもなく著者は近代腰痛臨床の礎を築いたパイオニアの一人,Toronto大学のWellesley病院前主任で,現在同大学名誉教授のIan Macnabである.彼は腰痛に対する疫学を通じての社会的意義づけの上に立って,徹底的に腰痛に打ち込んだ人である.その腰椎の機能解剖,病理,臨床アプローチの基本思想,病態理論に基づいた治療計画や治療法への指針は国際的定評がある.改訂第2版では共著者にこれまた新進気鋭のJ McCulloch教授を加えて,初版に書かれていなかったMRI,CTの価値を随所に加え,これまでの腰痛臨床の記述も修正補足して,完壁な内容に改めている.
Macnab先生は大変な親日家で,幾度となく日本の子弟に招かれて来日し,折々に聞く彼の講演はまさに単純明快であって,それは本書にちりばめられている多くのシェーマが,彼の基本的教育思想を反映し,容易に理解できる洗練されたものであることは他に類をみない.腰痛の原因の中心的なものは脊椎の老化変性疾患で,本書の中核をなすが,すべての腰痛疾患や外傷についても網羅され分かりやすい.特に指摘できることは,著者の一貫した腰痛の病態理論に貫かれた基線上に患者の接し方,診方,考え方,治療への指針や方針が,むしろ外科医指向でなく,総合アプローチとして書かれていることである.単著の強みでもあり,通読することを奨めたい.
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