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はじめに
近年,わが国では人口の高齢化が急速に進み,そのための早急な対応があらゆる分野で重要課題となっている,なかでも高齢者の体力・運動機能を維持することは,「健康な長寿」を得る基本的要因の一つである.適切な身体運動の負荷は,リハビリテーションの場におけるにとどまらず,運動機能の低下の防止4)や,肥満20),糖尿病18),高脂血症9,10),高血圧3,19)などの成人病の予防ならびに治療などに有効であることが証明されている14),また高齢化に伴って増加する骨粗鬆症は,Caの摂取不足とともに運動不足が重要な要因とされており1,8,13,15),高齢者においても適切な運動負荷の必要性がクローズアップされている.
一方,高齢化に伴う生理機能の変化としては,呼吸機能および最大酸素摂取量の低下6,7),運動後の心拍数回復の遅延2),体温調節能の低下23),ならびに体液量調節能の低下16)など,生理的調節能の低下ならびに生理的調節反応の予備能力の低下が報告されており,運動負荷を加える場合,安全性の上からもこれらを考慮に入れることが必要である.
このような観点から,我々は高齢化に伴う運動能の変化を明らかにするとともに,60歳以上の高齢者の運動処方の検討や運動負荷効果の判定に用いる資料を得ることを目的とし,高齢者にとって安全で,かつ生活に即した方法を用いて体力測定を実施している.
この場合,体力の指標としては従来わが国で体力の指標として一般に用いられている平衡性,敏捷性,柔軟性,協応性,筋力,持久性をバッテリーテストとして測定し,また心機能の指標として各人のペースで行うステップテスト(Self Paced Step Test,以下SPSTと略)を用いて測定している.そこで,これらの運動負荷テストの結果を中心に,高齢者の体力分布と年齢によるこれら測定値の変化について紹介したい.
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