Japanese
English
特集 温泉療法
呼吸器疾患と温泉療法
Spa Therapy and Respiratory Diseases.
矢永 尚士
1
Takashi Yanaga
1
1九大生体防御医学研究所気候内科
1Department of Bioclimatology and Medicine, Medical Institute of Bioregulation, Kyushu University.
キーワード:
水泳訓練
,
吸入療法
,
気管支喘息
Keyword:
水泳訓練
,
吸入療法
,
気管支喘息
pp.589-593
発行日 1989年8月10日
Published Date 1989/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106102
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はじめに
呼吸器疾患の温泉療法は広義と狭義にわけて考えることができる.広義とは温泉療法,気候療法,運動療法などを含めた総合療法と考える立場であり,狭義とは温泉療法そのものを考える立場である.ここでは広義に解釈して論じたい.
温泉療法についての専門学会は温泉気候物理学会であるが,本年度についてみると(第54回温泉気候物理学会(会長 東北大心療内科 鈴木仁一助教授,平成元年4月,仙台市),一般演題48題中5題(10.4%)が呼吸器疾患の温浴に関するものであった.うち3題が気管支喘息に関するもので,あと2題は慢性呼吸器疾患についてであった.温泉療法について論じたのは3題で,他は温浴時の気管支内温度,副腎皮質機能に関するものであった.
一方,気管支喘息の治療法に関する最近の知見1)を列挙すると,①喘息症状の重症度は気道過敏性と比例すること,②ベクロメサゾンスプレー,抗腫瘍メトトレキセート,抗アレルギー薬の適量,適当な期間の投与は気道過敏性の低下に有効なこと,③従来使用されてきたキサンチン薬やβ刺激薬の長期投与は,気道過敏性そのものは改善しないこと,④軽症ないし中等度までの患者に対してはβ2刺激薬の吸入薬が有用であること,⑤トロンボキサンA2合成酵素の阻害薬などの新しい薬剤の開発が進んでいることなどである.気道過敏性はhistamineやmethacholineで測定されるが,温泉のそれに対する効果を実証した研究は,見当らないようである.このような薬物療法の進歩のなかで非薬物療法である温泉療法がどのような臨床的意義があるかが,最も問われているのではないかと思われる.
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