巻頭言
リハビリテーション・マニュアルについて
池田 信明
1
1耳原鳳病院
pp.931
発行日 1988年12月10日
Published Date 1988/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105959
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63年9月10日づけの日本医事新報によると,「日本医師会は(9月)6日開いた常任理事会で,日医・厚生省の共同編集で『脳卒中リハビリテーション・マニュアル』を作成することを決定した.」とのことです.その決定をするにあたり医師会は厚生省と「保険診療における審査基準作りを目的としたものではない」との約束をかわしたとのことです.そもそも,この「リハビリ・マニュアル」は昨年6月末に厚生省の国民医療総合対策本部の発表した中間報告(以降「中間報告」)で「脳血管障害患者の早期退院,家庭復帰を推進していくため,リハビリテーション・マニュアルを作成し,急性期,回復期,慢性期の患者の状態に適合するリハビリテーションの実施を図る.」「早期退院へ向けて適切なリハビリテーションが行われるよう,長期入院の約4割を占める脳血管障害患者に対するリハビリテーションのためのマニュアルを作成する.」とされたものです.
リハビリの第一線で診療しているものとしては,この「リハビリ・マニュアル」はどんなものになり,どんな影響をわれわれの診療にあたえるようになるのかに重大な関心をはらわずにはおれません.つい数年まえまで(場所によっては現在も)保険診療において理学療法と作業療法の併用をみとめないとの見解を支払基金側がとり,非常に困った記憶があります.「リハビリ・マニュアル」の目的が「中間報告」のいう「早期退院」にあるとするならば,「マニュアル」に書かれた「早期退院」にむけたタイム・スケジュールに現場の診療がしばられることになるのではないかとの危惧を持たないわけにはいきません.
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