書評
―リハビリテーション医学全書 1 砂原茂一編―リハビリテーション概論
大井 淑雄
1
1自治医科大学整形外科
pp.600
発行日 1984年8月10日
Published Date 1984/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105219
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わが国にリハビリテーションという言葉が導入されて以来20数年が経過したが,リハビリテーション関係者にとって当初は一般への啓蒙活動,技術者の養成が急務であった.その結果,初期にはマスコミでも「社会復帰」という包括的な意味合いとは離れた訳語が必ず付け加えられたいたのが,現在ではリハビリテーションという言葉だけで一般に理解されるようになり,また医学的リハビリテーションにおいても欧米から数多くの知識,技術を収得し,急速な進歩を遂げ,世界的レベルに達するようになり,現在ではわが国独自のリハビリテーションを模索するまでに至っている.しかし当初叫ばれていた基本的理念とはいささか離れ,現在のわが国のリハビリテーションはやや技術主義的に進んでいる傾向があるように思われる.
このようなわが国のリハビリテーションの現状の中で今回,砂原茂一氏編による「リハビリテーション概論」が出版されたことは,時代の要請であろうと思われる.すなわち氏の言葉を借りれば「リハビリテーションの掛け声がやたらに高くなった今日,一歩退いてその基本的理念に立ち帰り,また戦略をきびしく吟味することが強く求められている」ように思われる時期にわが国のリハビリテーションが直面していると考えられる.
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