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はじめに
近年Bobath法やVojta法の導入により,脳障害児のリハビリテーション(以下リハと略す)の発展は目ざましいものがある.とくに脳障害児の早期発見・早期療育は世界的に定着し,KöngやVojtaの治療成績からもその有効性は識者の認めるところである.我国においても約10年前にBobath法が,約5年前にVojta法が紹介され,諸外国におとらない成果が得られつつある.
しかし我国では障害児福祉が施設中心に方向づけられ,各地に大規模施設(コロニーや大規模収容施設)が設立され,施設収容で事足れりとする行政志向があった.施設収容によリ障害児は地域や家庭から隔絶され,積極的リハの行われないまま放置されることが多かった.大規模施設の役割は無視されるべきではないが,在宅障害児の地域ケアーを促進しようとする在野の識者の考え方から逆行するものであることも否定できない.また施設関係者からも施設の後進性に対する内部告発がなされるようになり,地域に密着した小規模通園施設1)の必要性が提唱されるようになった.その根拠は障害児も家庭においてこそ発達が保障されるものであり,地域の中で必要なリハ技術を提供できる通園施設の充実が必要であるという考えによるものと思われる.
脳障害児在宅リハに対してさらに重要な役割を荷うのは,保健所活動であり,その主流をなすのは,保健婦の家庭訪問活動である.在宅リハを成功させるためには,保健婦の技術的かつ精神的援助が不可欠であり,保健婦の資質やパーソナリティが問われる.というのは,障害家庭は家庭に閉じこもりかつ地域から孤立しがちであり,保健婦の暖い援助が強く望まれるからである.障害児在宅リハは家庭,保健所,通園施設が相互に信頼関係を維持しながら,児の療育を促進し,社会的自立を目志すものでなければならない.
このような視点に立って,脳障害児の在宅リハに対する保健所活動の有り方を中心に,通園施設の役割にも言及したい.
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