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講座
筋・神経系の電気診断(5)―神経興奮伝導速度の臨床
Electrodiagnosis of Peripheral Nerve and Muscular Involvement (5): Nerve Conduction Study, its Clinical Use.
明石 謙
1
Ken Akashi
1
1川崎医科大学リハビリテーション科
1Department of Rehabilitation Medicine, Kawasaki Medical School.
キーワード:
神経興奮伝導速度
Keyword:
神経興奮伝導速度
pp.365-370
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103984
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はじめに
神経興奮伝導速度(以後,伝導速度と省略)の測定は,現在では確定した信頼度の高い臨床検査方法の1つと言って良い.この章ではその実際について述べることになるが,その前に一般的な事項について要約したい.
まず末梢神経系線維を興奮させるには一定以上の電流の強さが必要であり,興奮させるのに必要な最少の電流の強さを閾値(threshold)と呼んでいる.この閾値以下の電流の刺激の回数をいくら増しても神経は興奮しない.またこの閾値以上の強さであれば,いくら刺激を強くしても興奮の大きさには変化が無い.これを“all or noneの法則”と呼んでいる.電流を流す時間を調節して行くと時間が短くなるほど電流の強さは大きいものが必要となり,その関係を電流の強さ(閾値)と時間でグラフに描くと相曲線の一部となる.これを強さ―期間曲線と言っている.
神経線維の一部を興奮させると,その興奮は中枢側と末梢側の両方へ伝えられる.その線維が知覚神経ならば,末梢→中枢へ伝えられるのが正常の形であり,これを順行性(orthodromic)伝導と言い,中枢→末梢へ伝えられるのは逆行性(antidromic)伝導と呼ぶ.運動神経ならばその逆で,末梢→中枢は逆行性,中枢→末梢は順行性である.
伝導速度は神経線維の太さが影響し,太くなれば速くなる(表1).また,神経線維が有髄か無髄かで速さは50倍ほども異なっており,有髄の方が明らかに速い.その理由は電位の変化が,有髄の場合はランビエの絞輪を単位に起るためでこの方式を跳躍伝導と呼んでいる.
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