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はじめに
戦後30年を経て,わが国でもようやくリハビリテーション医療の内容とそのシステムに関し,いくつかの提案とその試行がなされつつある.リハビリテーション医療の実行の場として,第一線の総合病院のリハビリテーション医療のあり方,リハビリテーション専門施設・病院の役割,収容施設との関連,スタッフの配置と交流の問題など,すでにいしずえの時代は過ぎて,中には建設されたものの使用法に関する再検討の時期にきているものもある.しかしながら,リハビリテーション医療の範囲とか,その内容について必ずしも統一された見解は存在しない.
リハビリテーション医学の第一の目標は,もしも可能ならば,身体障害を実質的に除去することである.第二は障害をできるだけ軽減することである.第三は残存した身体障害を有する人に彼の能力を最大限に活用して生活し,仕事をすることができるように再訓練と教育を行うことである.
こうして対象とする障害が,かりにほとんどの場合,医療によって除去または軽減できない性質のものであっても,リハビリテーションの最終目標が身体的自立,あるいは社会的自立にある限り,疾患または外傷にひきつづいて,できるだけ早い時期にリハビリテーション医療が正しく行なわれなければならないことは論を待たない.
今回,東京都衛生局長から,リハビリテーション医療基礎調査について委託を受け,その前年度に実施された脳卒中に関する基礎調査1)に引きつづいて,東京都におけるリハビリテーション需要の基礎調査を行ったが,その際,以上の基本的考え方を出発点とし,まずいくつかの総合病院における医療と,それに伴うリハビリテーション医療との関係を調査研究するため,リハビリテーション部門を有する総合病院から5病院を選んで,その現状を調査した.上記のようにすでに昭和49年度に都内脳血管障害患者数について,そのリハビリテーション医療の需要推定に関する報告がなされており,今回はそれを含めて同年度のリハビリテーション医療を必要とする身体疾患の内容分類も行なってみた.
こうして,いわゆる急性期疾患の治療に重点を置く総合病院のリハビリテーション医療の現状から,若干の問題が提起されたが,その最大のものは,これらの急性病院から障害を残して退院(通院しなくなったものも含む)していく場合の予後である.今回,リハビリテーション医療開始時の障害のレペルは調査できたが,終了ないし中断時の障害の内容を知ることは十分できなかったため,一つの資料として,昭和49年度交付の身体障害者手帳の統計的分析を試みた.
いずれにしても,リハビリテーション医療供給上の問題を考えるに当って,リハビリテーション関連諸施設の早期整備とともに,初期リハビリテーション医療と,その後のリハビリテーション医療との連携を重視せねばならないことが明らかになった.
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