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昭和51年10月1日から身体障害者雇用促進法が改正され,300人以上の企業では身体障害者を1.5%以上雇用することが義務づけられた.この基準に達しない企業では不足数1人につき毎月3万円の納付金を納入しなければならない.各企業の身体障害者の算定は身体障害者手帳に依るが,手帳を保持しないものに対しては身体障害者福祉法指定医の診断書か,または産業医の診断書に依ってもよいことになっている.問題は,身体障害者福祉法ではわざわざ指定医の制度を設けて厳正を期しているのに,何の指定もない産業医に身体障害の診断を委せてもよいものかどうかということ,産業医は企業の被雇用者であり,第三者的な立場には立ちえないこと,企業では莫大な企業利益に関係する問題なので躍起となって抜け道を探し求めるだろうということ,の3点である.せっかく法が改正されたよろこびも束の間,このような大きな欠陥が用意されていたとは意外の一言に尽きる.
今月と来月,2号ひき続いて「手とリハビリテーション」を特集した.「手とリハビリテーション」を1つに纒めた企画は従来ほとんど見られない.本号では,上羽氏が精妙な手の機能解剖について最近の知見を含めて詳しく解説され,今田氏は氏の開発されたFQについて痒い所に手が届くように実際の方法を紹介された.宝積氏は手の装具の処方に新しい工夫を試み,医師とOTとの呼吸の合った協力により実効を挙げた.小川氏のサリドマイド児のADL調査は,直接サリドマイド児に体当りして纒められた力作であり,貴重な資料である.五味氏もまたサリドマイド児の排泄処理補助具研究班で開発した新製品を紹介したが,これに類する報告は世界でも例を見ない.宮崎氏の女性収尿器の開発も注目すべき新工夫であり,古賀氏の身障ドライバー用車椅子の設計もよい仕事である.本号では創意,工夫,新開発などの論文が多く,種々の意味において充実した号となった.
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