特集 視覚障害のリハビリテーション
誌上参加
荻島 秀男
1
1東京都養育院附属病院リハビリテーション部
pp.230
発行日 1975年3月10日
Published Date 1975/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103295
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“視覚障害者の社会復帰”というテーマは他の障害を持った方々の社会復帰とも関連がありますが医療と福祉との接点,またはよい意味,正しい意昧での妥協をどこに持って行くかということが現在問われていると思います.根本的には人権思想まで立戻って考えなければなりませんが,わが国での大きい障害は医師の教育の中で患者学を教えていないということだと思います.持っている疾病,障害の表面的治療のみで全体的にその個人の5年先10年先を一緒に考えるという姿勢を養う教育ではないということ―医学部の教育でリハビリテーション医学が必修になっていないことは致命的です.
永年米国で生活しておりましたが盲の社会復帰に関してかなり奥行きのある政策,配慮がなされているということに感心致しました.たとえば公共建造物の売店の営業権は盲人のみに与えられます.この法律は1930年代にすでに国会を通っておりましてその後改正されるに従って盲人の福祉をさらに考慮したものになっております.現在2万人近くの方々がこの制度で営業権を持ち自立しております.営業権を持っておりますのでいくらでも正常の人達を雇用することが出来るわけです.また盲人のための作業所が80ヵ所ほどありますが多くの作業所がかなり大きな規漠で文房具類を作っております.これに対しては政府のレベルというよりも各地方自治体が保護政策をとっておりまして,これら工場より製産される品物を自治体が優先的に買上げているようです.このようなことはわが国でも十分できると思うのですが,最近のように行きすぎの権利の主張が叫ばれますと,正常人が差別されるということで日本人の感覚ですと反発があるかもしれませんね.
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