書評
バーバラ・ウィルソン 著,鎌倉矩子・山﨑せつ子 訳「事例でみる神経心理学的リハビリテーション」
藤田 郁代
1
1国際医療福祉大学言語聴覚学科
pp.968
発行日 2003年10月10日
Published Date 2003/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102714
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著者のバーバラ・ウィルソンは英国の高名な神経心理学者であり,本邦でも「The Rivermead行動記憶検査」および「BIT行動性無視検査」を通じてなじみの深い方も多いであろう.
神経心理学は医学,認知科学,心理学,言語病理学,作業療法学等からの学際的研究が重要な位置を占める学問領域である.著者の学問的背景は心理学にあり,詳細な症状記述と行動変化の過程の分析にその特徴を見てとることができる.特に,各種の神経心理学的症状にリハビリテーションを行い,その効果を人生の質(QOL)の面から長期に渡り追跡し,記述した書としては他に類を見ないといってよいであろう.
本書では著者が約20年の間に出会い,リハビリテーションを行った600人以上の脳損傷患者の中から特に多くのことを教えてくれた20人が取り上げられている.症状としては記憶障害,失語,失読,失認,視空間無視等を呈した者である.これらの者は治療期間だけでなく治療後も長期的にフォローアップされ,また本書を著すにあたってインタビューも試みられており,その障害が彼らの生活にどのように作用し,著者の治療的介入がその後の人生にどのような変化をもたらしたかが詳しく記述されている.
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