Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
高次脳機能障害からの回復には長期の時間が必要とされる.そのため,受傷後,早期から中期にかけて通院によるリハビリテーションを受けて職場復帰,一般就労できる者もあるが,それがかなわず作業所などでの福祉的就労にとどまる者,また就労しても,その後,仕事を辞め,自宅だけの生活に戻ってしまう者も少なくない.厚生労働省による高次脳機能障害モデル事業の報告によれば,受傷前に就業していた者のなかで,その後のリハビリテーションで就業可能となった者はわずかに23.1%(34名/147名)であった1).
高次脳機能障害者が利用できるデイケアや作業所は,現在のところ身体障害者や精神障害者,知的障害者のために作られたものがほとんどであり,高次脳機能障害者専用に設立されているものはきわめて少なく,全国にまだ27ぐらいしかない2).そのため,高次脳機能障害者は自分とは異なる障害をもつ利用者のなかに入っていくことになるが,本来,高次脳機能障害専用に作られた施設ではないために,高次脳機能障害特有の難しさから,これらの施設を利用する側にも施設側にもさまざまな問題が生じている.その難しさとは,経験が積み重ねられない,疲れやすく課題が続かない,自分で行動できない,易怒性・攻撃性により周囲と齟齬が生じる,などである3).そのため,他の利用者と同じようにプログラムや作業に取り組めず,座りっぱなしになったり4),仲間ができず孤立してしまったりする.
精神障害者の作業所側も,「ニーズはあっても受け入れは困難」と回答するところが,2005年の39%から2007年には59%に増加しており,高次脳機能障害について関心が高まると同時に,対応の難しさが露呈してきている3).また,精神障害リハビリテーションの特徴であるゆるやかな枠組みで受容的な雰囲気が,かえって高次脳機能障害者にとって望ましくない影響を及ぼしたりする5).
そこで,沖縄県において行き場をなくした高次脳機能障害をもつ当事者と孤立する家族が,お互いに支え,集まれる場所を作りたいという願いから,2007年に家族会による作業所「ゆい沖縄」を設立した.
本稿では,「ゆい沖縄」の特徴と,そこを利用することによる効果について報告する.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.