Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『甲陽軍鑑』の山本勘介―歴史を変えた障害者の処遇
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.698
発行日 2010年7月10日
Published Date 2010/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101818
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『甲陽軍鑑』(原本現代訳,教育社)は,武田信玄・勝頼の父子二代にわたる事績が盛り込まれている軍学書だが,そのなかには幾多の障害を抱えていた山本勘介が,その才覚を見込んだ信玄から破格の待遇で召し抱えられるという逸話がある.
そもそも山本勘介という男は「さんざんな醜男で,その上に一眼,指も不自由で足も不自由であった」.勘介は隻眼の肢体不自由者だったのである.三河の出身だった勘介は,当初は駿河の今川義元に奉公を申し出た.だが,勘介の寄宿先の広東という人が,「この山本勘介は大剛の者である.ことに城どり,陣どり(城構え,設計)といった軍法はよく鍛練されている」と推薦したにもかかわらず,義元は召しかかえなかった.勘介は駿河では「片輪者」と噂され,軍法の知識についても今川家に奉公したいがための虚言だと言われて,結局,今川家に仕官することはできなかったのである.
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