巻頭言
高次脳機能障害をめぐって
藤田 郁代
1
1国際医療福祉大学言語聴覚学科
pp.709
発行日 2003年8月10日
Published Date 2003/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100861
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去る6月に札幌で開催された第40回日本リハビリテーション医学会では,脳外傷のリハビリテーションに関する発表が多数みられた.特に,「高次脳機能障害者支援をめぐる医療と施策」と題したシンポジウムでは,平成13年度より厚生労働省が主導して行っている「高次脳機能障害者支援モデル事業」の中間報告がなされ,興味深い情報を得ることができた.
本シンポジウムの討議において会場から「高次脳機能障害」の定義について質問が出されたが,この問題は現在論議の的になっているところであり,応答も今一つ歯切れがよくなかった.モデル事業では,「高次脳機能障害」という用語を脳外傷や脳血管障害等による記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害等の認知障害に限って用いており,失語,失行,失認等の巣症状は除外している.一方,学問的には「高次脳機能」には言語,動作,認知,記憶,注意,人格,行動等の人間の高次な脳機能すべてを含むのが一般的であり,当然のことながらその障害から失語,失行,失認を除外する理論的根拠を探すのは難しい.
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